#116.中絶(5)
おぼろげな意識の中、
どこか遠くの方で、
女の人の声が聞こえました。
「・・・・・そろそろ目覚めると思いますから」
「・・・・あ、はい・・・」
ぼんやりと、白い天井が見えました。
「・・・・・・真緒!!」
・・・・・・・アイツくん・・・???
声のする左側を見ると、
アイツがベットの隣に座って、
心配そうにこちらを見ていました。
「・・・・・・終わったの?」
「・・・・・うん」
「・・・・・・赤ちゃんは・・・・?」
「ほんとに、ごめんね・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・。
もう、お腹の中に、いないんだ・・・・・
守ってあげられなくて、ごめん・・・・
本当に、ごめんなさい・・・・・・
そう思うのと同時に、お腹に張るような痛みが
し始めました。
それと同じ位の、いいタイミングで
看護婦さんが入ってきました。
「あら、目が覚めたようね。
じゃあ、お薬のんで、大丈夫なようなら
いつでも帰っていいわよ。
・・・・・ちょっと待っててね。」
そういうと、看護婦さんはまた部屋からでていきました。
しばらくすると、
焼きたてのような温かいパンと、お茶と、薬を持って
また入ってきました。
・・・・・・・なんの薬だったかは、忘れてしまいましたが・・・・
とても温かく、おいしいパンだった記憶があります。
お腹が痛いのは、「あった物がなくなったんだから」
との事でした。
つづく
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